2000.2.11
幸せ太りとコードの転調
2000年2月11日。建国記念日の今日。
東京は、とってもいいお天気だった。
もう、すっかり春の陽気かな。風はちょっと冷たいけどね。
レストランFで、ブライダルのお仕事してきた。

2〜3日前、YチーフからTEL。
今度の11日だけど、15分くらい、早く来てくれないか?って。
お客様の歌が、1つ入るらしく、その伴奏合わせってことらしい。
それは別にかまわないんだけど、なんの歌だか、わからないっていうの。
なんでも、新郎新婦をびっくりさせたくて、当日まで内緒だとか…(^^ゞ

え…それあり?(^^ゞ
伴奏の私にくらい、曲名、言ってくれないと、大変じゃないか…。
ま、仕方ないけど、さあ。
知ってる曲でありますようにと、ただ祈って、今日を迎えた。

約束の時間に入ってみると、開場前なのに、もうすでに、半分近くの方が、入ってる。
よくあることなんだけどね。
レストランで、他で待ってるところないから、早めに着いた方は、どんどん入って来られるの。
遠方からの方は、たいてい、時間を多く見て、早く来られるし。
今日の歌い手さん、新婦の従兄さんだという茶髪の男性、こういう状況じゃって、歌うのを遠慮されちゃって。
「伴奏、大丈夫ですか…?」
「知ってる曲だったら、大丈夫かと…」と答えた私に、間髪入れず、
「知らないと思います!」って(^^ゞ
そんなら、事前に、楽譜見せてくれよお…。
長渕剛のギター譜を見せてもらって、お互いにちょっとため息。
うん、確かに、聴いたことない(^^ゞ
「コードがあれば、何とかなると思います」 とりあえずの笑顔で答えた私。
そんなに難しそうじゃないしね。
そのまま、他の楽譜の用意などしていた。

ちょっとして、また私の側にやってきた男性。
「すいません、Cのコード、ちょっと出してもらえます?」
ドミソ、ってピアノで小さく弾いてあげて。
なんとなく首かしげてる男性に、歌の最初のミ、弾いてあげる。
「最初、この音です」と私。
「うーん、ちょっと俺には高いみたいですねえ…」
…ええ? 今さら? 
男性、ちょっとだけ歌って見せてくれて。
「これくらいならいいんですけど」
…この音なら、最初のキーは『ファラド』かな。なら、ヘ長調だわ。 
「このキーで弾けます?」とっても心配そうな彼。
やってみようじゃない。私はここのピアニスト。
「ええ、なんとかします。大丈夫です」
満面笑顔で、答えた私。おいおい…どうする?(^^ゞ

始まるまでに、時間は、まだ何分かある。
コード、全部転調して、書き直すしかないでしょ。
幸い、C、F、G、みたいな、とっても単純なコードだった。
全部のコードを5つ下げて、なんとか大丈夫。
間奏と後送は、ピアノがメロディーになってるけど、カタカナでドレミを書き込んで、なんとか読めそう。
知ってる曲だったら、安心できたんだけどなぁ…。
コードだけでも、なんとかしなくちゃね。
それから5分くらいして、心配そうな彼、また近くに寄ってくる。
「大丈夫ですか…?」
「はい。もう平気。大丈夫ですよ」もう今度は、落ちついて答えられた。

今日の主役の新郎新婦。
まさに美男美女っていう取り合わせだった。
Jリーグの川口選手にちょっと似た新郎さん。
新婦は、愛くるしい、でもしっかりしてそうな人だった。
すでに入籍し、半年くらいたってるらしいけど、その間、新婦の手料理で、新郎、ちょっと太ったんだって。
これぞ幸せ太り…っていうことよね。
ご親族やお友達に囲まれての、牧師さんの人前挙式に続いて、和やかな披露宴となった。
新郎のご実家が島根で、新婦のご実家が、東京の府中みたい。
で、新婦のお母様と新郎新婦が中心となって、披露宴の準備、進められたみたいね。
会食、ケーキカットと進み、インタビュー形式のスピーチ。
突撃スピーチだったけど、皆さん、和気あいあいと、いろんなお話をしてくれてる。
前もって、指名されてるより、こっちの方がいい感じ。
あくまでも、レストランウェディング。
堅苦しくなく、フレンドリーな雰囲気じゃないとね。

さてさて…。
問題の、歌の伴奏になった。
「とにかくぶっつけ本番で、うまく行くかどうかわからないんだけど」と言いながら、いい声を披露してくれた従兄さん。
伴奏のコード、間違えなかったよ。
間奏も、なんとか、無事にクリア。
全く知らない曲って、勇気がいるんだけど、なんかいい歌だったなあ。
拍手に包まれて、とっても良かったと思う。
「 HOLD YOUR LAST CHANCE 」 という、バラードだった。

歌が終わり、エンディングを迎えた。
今日は、花束贈呈の代わりに、ご両親へのプレゼント。
ちゃんと箱に入ったウェディング姿の、ペアのテディベア。
まず新郎から、ご両親への挨拶があった。
自分の両親へ、「今まで育ててくれて、どうもありがとう」
新婦のご両親へ、「大事なお嬢さんをいただいて…」
ここで、新婦のお母様、感極まって、声上げて泣き出してしまった。
その後の新婦の挨拶も、泣きながらだった。
涙で終わる披露宴って、やっぱりいい。
ほんとにきれいな涙だもの。
最後の謝辞の時も、新婦、涙ぐんでた。
「嬉しくって、涙が止まりません」って。
ご親族の、年輩の男性の横顔にも、涙が見えた。
なんだか、胸がつまる思いだった。

今日の新郎新婦。一生けんめい、がんばってた。
最初、披露宴の入場の時、一人一人に、手書きのお手紙、渡してたのね。
デザートの時も、カットしたウェディングケーキ、1人ずつに配ってたし。
自分たちの披露宴、できるだけのおもてなしをしたいって気持ち、ものすごく伝わったと思う。
遠いところから来られたご親族もお友達も、喜んでいただけたんじゃないかな。
どうぞ、末永く、お幸せにね。